ヨコハマトリエンナーレ2014

    3-B森村泰昌君の現代美術展(3-F 粕井 均)

 美術家として世界的に評価されている森村泰昌君が、アーティスティック・ディレクターを務めるヨコハマトリエンナーレ2014が横浜美術館で開催されています(11月3日まで)。オープンの8月1日、鑑賞してきたのでその紹介をします。

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 森村君は古今の名画の人物になりきる作品で知られてますが、今回は3年に一度の国際美術展のディレクターとして、国内外の現代芸術家の作品から〈自分が面白いと思ったもの、好きなもの〉を選んで、広い美術館全館だけでなく、埠頭に設けられた第二会場も使って展示しています。

 題して「華氏451の芸術:世界の中心には忘却の海がある」。全体テーマ「忘却」をめぐる、物語じたての構成です。ちなみに451°Fは紙の燃焼点で、すぐれた記憶装置である“本”の所持を禁止し焼いてしまう近未来社会を描いた、レイ・ブラッドベリのSF小説の題名で知られています(フランソワ・トリュフォー監督の映画化作品も有名)。現代美術といい、タイトルといい、難しいと思われそうですが、私たちの日常的思考を揺るがせてくれる作品に出会える一方、素直に楽しめる作品も多数あります。

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 会場最寄りの地下鉄駅構内に置かれたゴミ袋の集積のようなもの。知らない人は怪訝な顔をして通り過ぎていきますが、これは会場へいざなう“アンモニュメンタルなモニュメント”です。よく見るとかわいいですよ。柔らかいのか堅いのか、すごく気になります。でも触らないでね。

 会場に入ると、強化ガラスでできた逆台形型の巨大な容器が待ち受けています。これは捨てられ忘れられる過去の美術作品ためのゴミ箱なのです。会期中、失敗作がどんどん持ち込まれ、次々投げ入れられてゆくとのことです。

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 第一室(ではなく、第一話です)には、真っ白なままのカンヴァスや、音符が書かれていない五線譜が展示されています。なんだこれ? と思ったとき、森村君が直接語ってくれる音声ガイドが助けてくれます。これは必聴です。作品の見どころの解説だけでなく、ぼくたちが人生や時代の中に忘れてきたものについても示唆されます。

 第二話は「釜ヶ崎芸術大学」。“忘却の町”釜ヶ崎を拠点にするNPOが主宰する、自主講座・ワークショップでのおっちゃんたちの作品が紹介されるのも、森村君らしい着眼です。

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 序章+11話からなる大規模展です、こうして順に書いてゆくと切りが無いので、個人的に楽しめたものから一つだけ。それは新港ピア会場の映像作品です。飽きずに見入ってしまいました。米軍ヘリ(無人です)が音を立てて飛来してきては次々に落下し、海に沈んでゆく様だけがずっと映し出されます。観てるとなぜか爽快な気分になるのはどうしてでしょう。

 関東方面在住の同窓生諸君はもちろん、大阪の人も横浜に出かける折には、観光や仕事の時間を割いて鑑賞されることをお勧めします。

写真キャプション

① レセプションで、挨拶の原稿を取り出す森村君

② これは何に見えるでしょう?

③ エントランスホールの、芸術のための巨大ごみ箱

④ 天井にまで釜ヶ崎芸術大学の作品が

(右のタイトル題字(リンク付)はHP担当が転載しました。)

参考:横浜トリエンナーレホームページ

アーティスティックデザイナー森村泰昌 の紹介ページ

http://www.yokohamatriennale.jp/2014/director/index.html

 

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