キャリアチェンジ犬 Lady

                             

「キャリアチェンジ犬 Lady」(3-C)岸 保典

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元々、動物好きではあったが、会社勤めをしてからは、社宅やマンション住まいでなかなか動物を飼えなかった。特に好きな犬は飼うことが難しかった。横浜に住んでいたころ、我が家の子供達が近くのペットショップに良く遊びに行っていた関係でオーナーとも知り合いになり、そこが経営していたペットホテルで預かっていた犬達の散歩を時々手伝ったりしていた。その後小生はアメリカ駐在となった。家内が半年後に、ペットショップのオーナーから貰ったヨークシャーテリアと一緒に飛行機に乗ってアメリカにやってきた。名前はテータム。6年間アメリカで共に暮らし、一緒に日本に戻ってきた。テータムは元気いっぱいの人気者のヨーキーであったが、日本に帰ってから病気で12歳にして天国に旅立った。その後、小生が大阪に転勤になり実家で暮らし始めた頃、赤毛のプードルを購入した。しかし妹が欲しいと連れて帰って行った。暫くして、またぞろ犬を飼いたくなり、大型犬を飼う事を考えた。淡路島や神戸のラブラドールのブリーダーにも行ってみたりした。ある時、盲導犬になれなかった犬(キャリアチェンジ犬)が譲渡されると言う話を聞き、いろいろと調べてみた。盲導犬センターは全国にあるが、関東方面では引取りに行くのも大変故、とりあえず、千早赤坂にある日本ライトハウスに絞った。

盲導犬は多くのボランティアに支えられている。母犬や父犬を育てるボランティア、生まれてから愛情を持って人間好きになるように育てるボランティア(Puppyワーカー)。そして1歳になると犬たちは訓練所に連れていかれ訓練を受けるのである。その訓練中に選別されていき残った犬が最終テストを受けるのである。

まずは、申込みが必要である。盲導犬センターも誰にでも引渡すのではなく、一応犬をきっちりと面倒を見てくれるところに渡すとのこと。

つまり責任を持ってきっちり世話をしてくれる飼主でないとダメであり、犬の病気を防ぐためにも、屋内飼い。食事を与えるのは当然で、予防注射や医療もきっちり受けさせことなどが必要である。申込みの書類を作成し日本ライトハウスに提出した。半年から1年は待つとのことであった。

犬については、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、その混血、色は黒かイエロー、オス、メスと希望が書ける。わが家では、黒は写真を撮った時に目がはっきりしない。オスはトイレが困るとの意見で、イエローのメスを希望した。(最近は70%の人間男性が座って小用を足すように奥さんに訓練されているらしい。盲導犬のオスも座るように訓練されるようだ。しかしキャリアチェンジ犬のオスを見る限り、好きなように木の幹に引っかけていた)

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3か月位経って、日本ライトハウスから電話があり、候補犬がいるのとのこと。まずは見に行くこととした。千早赤坂まで約1時間のドライブで、日本ライトハウスに到着、応接間に通されてしばらく待っていると。我が家のLady(母がゴールデン、父がラブラドールレトリバー)がこんにちは!と言う感じで臆することもなく、尻尾を振り振り部屋に入ってきた。Ladyは6匹兄弟で、この兄弟は’L’から始まる名前が付けられている。とにかく元気一杯で、小さな犬しか飼っていないものにとって、当時27kgの犬は、でかいと言うのが第一印象であった。見ると貰いたくなるもので、その場で譲渡申込書類を貰い、犬の受入れ準備の為2週間程猶予を貰った。そして犬小屋(オリ)や茶碗、首輪、紐などを揃えた。

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2週間後に再度、日本ライトハウスに行き、譲渡書類を渡し、今後活躍する盲導犬達の為に寄付をした。

Ladyは訓練所で飼っている猫を訓練中に追いかけたため失格となった由。他の動物や犬を追いかけると盲導犬としては致命的なようである。….わが家の隣家には猫が数匹放し飼いしており、Ladyは散歩の度に隣のフェンスを覗いて行く。その時猫が居ると、Ladyの喜びは最高潮に達するが、猫は背中を丸くして尻尾を立て、シャーと起こる、Ladyは尻尾をぶんぶん振って、遊ぼう、遊ぼうと必死である。

訓練は英語で受けており、No, Sit, Stay, Down等、英語の指示に従う。お座りと言っても尻尾を振ってじっと立っている。家の中では殆ど吠えないが、トイレに行きたいとき、お腹がすいたときは、吠えて知らせる。Ladyはメスだが、吠え声はオッサンの声である。訓練士さんが言っていたが、誰にも懐くが、昔の飼い主のことはすぐ忘れるようですよと。引取り時も車の後ろに跳び乗って、訓練士さんたちに、そしたらさいならという感じであった。

一日320gのドッグフォードを食べる。訓練所では朝一回の食事であったが、わが家では朝200g、夜120gの2回に変えた。家の中で放し飼いの為、食事中にどうしても欲しがる。ついついパンの切れ端をやったりして、27kgの体重が3年経って30kgになってしまった。足、膝の負担や内臓の負担を考えれば、27kgをキープさせねばならないと思っている。

犬には絶対やってはいけないものがある。玉葱、ネギ、ニンニク等、血液の一部を壊すとか。えび、いか、カニ類もダメ。昔は人間の残りをやっていたが、可哀そうなことをしたものである。特に玉葱入りのハンバーグは犬にとり最悪の食べ物である。

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1年に一回、赤坂千早村の訓練所でキャリアチェンジ犬達が集まる行事がある。100匹位の犬が集まるが、殆ど吠え声を聞かないし。講演の際は、殆どの犬が足元で伏せをしている。Ladyも家ではわがままになって来たが、ここではそれなりにおとなしくしている。以前この集まりで、Ladyは子犬の時に育ててもらったPuppyワーカーさんに再会出来大喜びしていた。兄弟、母親とも会うことが出来た。今年は父親にも会うことが出来た。

この犬種は確かに人懐こく非常にやさしい性格である。既に1歳であったが、来たその日から全く物怖じがなく、わが家の2階と1階を自由に行き来していた。しかしスリッパ、靴、服、靴下と噛む癖があり、スリッパは相当破壊された。ペット用のおもちゃも1日で破壊していた。それでも3年経ってだいぶマシになってきた。

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Ladyは今青春真っ盛り、犬の命は短いが、日々を大事にして、一緒に散歩を楽しみながら、お互い元気に暮らしたいと思っている。

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☆写真説明(上から)

  • Ladyを迎えに行った時、日本ライトハウスで
  • 母親のユーミンと子供たち6匹兄弟
  • 1年に一回のキャリアテェンジ犬の集まり
  • 宝探しゲーム(Ladyと飼い主が走って手紙のアイテムを探している。
  • 川のほとりで、思索にふけるLady


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