アレルギーの診察室からの紹介

 私は小児科医をしていますが、知的障がいをもつ子どもたちのための音楽教室の「アゴラ音楽クラブ」を応援して賛助会員になっています。その「アゴラ音楽クラブ」を主催されている水野恵理子さんから、8年前にオンラインジャーナルの「アゴラ通信」に何か書かないかとお誘いをうけました。そこで、「アレルギーの診察室から」と題して、2ヶ月に1回雑文を連載するようになり、2014年5月号で連載第47回になりました。

 高津高校22期のホームページができましたので、ご案内したいと思います。

 最新号はアゴラ通信245号(5月号)、「アレルギーの診察室から47―サモアの思い出」です。

  http://www1.kcn.ne.jp/~agora/agora_tushin/agora245.pdf

 (ホームページ担当:こちらにも掲載(画像除く)しています。)

サモアの思い出」に出てくる杉本尚次先生は高津高校2期、私が属していた地歴部の大先輩で、国立民族博物館の教授をされていました。

 ちなみに、バックナンバーはこちらから  http://www1.kcn.ne.jp/~agora/index1.html

バックナンバーからは見られなくなっているので、高津地歴部のことを書いた第17回を紹介します。

3-J 土居 悟


アレルギーの診察室から 17

         ------土地と人------            

                         土居 悟

「土地と人」とは大阪府立高津高校地理歴史研究部(地歴部)の機関誌の名前です。高校時代は地歴部に属していて、高校1年生の夏に宮崎県椎葉村に行きました。椎葉村は宮崎県の内陸部にあり、平家の落人が隠れ住んだ地とされています。焼き畑農業を見せていただいたのが非常に印象に残りました。写真は1967年8月6日に椎葉村臼杵俣で私が撮影したもので、まさに土地と人です。このあと、ここにソバの種を蒔きます。

現在はもうみられなくなっているだろうかと思いながらも、ネットで椎葉村ホームページの伝承文化のところをみてみますと、現在、椎葉秀行さんただひとりが、日本で焼き畑を伝承しておられることが分かりました。

http://www.vill.shiiba.miyazaki.jp/cms/?blogid=5&catid=48

 さて、その年に地歴部の大先輩の難波の御自宅に、部員の1人としておじゃましました。大先輩というのは、その後国立民族学博物館教授になられた杉本尚次先生で、当時、長年のお仕事をまとめられて、博士論文の体裁に整えられていました。私達は、その『日本民家の研究ーその地理学的考察ー』(1969年ミネルヴァ書房から刊行)の論文に添える民家の写真をアルバムに貼る仕事をお手伝いしました。

最初は何気なく軽い気持ちで作業をしていたのですが、だんだんこれはただごとではないと感じてきました。黒潮の流れに乗って、南太平洋から、沖縄を通って、日本民家の源流が伝わった。そのことを通じて日本文化の源流を研究できるのではないか。これこそが地歴部のテーマだ。お手伝いをしながら、杉本先生の学問にかける情熱のいくぶんかが乗り移ってきたような気持ちになってきました。今から思えば、学問の生産過程のあれやこれやの一部に、雑用ながらも参加したことになるのではないでしょうか。教育とは思うに、言葉の上での理念ではなく、知の生産の現場に参加し、学問にかける心意気といったものを伝えることと感じとることでしょう。その夜は、お手伝いした時に感じた充実した気持ちの何たるかを忘れないようにしようと思いながら帰宅しました。

地歴部ではクラブ活動のあとソフトボールをよく行っていました。年末にはクリスマスパーティーも。ある年のクリスマスパーティーのあと、残ったインスタントコーヒーをどうしようかということになって、1/3ほどのこっているネスカフェの瓶に、みんなで茶目っ気を発揮して、のしを上まできっちり巻いた上にお歳暮と書いて、社会科教官室にうやうやしく届けにいって、そして、すぐ退散しました。何日かして、社会科教官室に行ったら、その後、今宮高校校長、大阪府高野連会長を歴任された、顧問の武岡輝行先生が、「さらと思ったら残りもんをもってきよったな」と、にこにこしながら言われました。その横から、教師と生徒はこういうつきあいが一番よろしいなという声が、五目並べをしていた別の社会科の先生から聞こえました。すでに校舎は建てかわっていますが、当時の地歴部と社会科教官室の雰囲気に今でも限りない愛着を持っています。(2009.5)

             地歴のメンバーの写真

chireki

              左から、土居、吉田、森口、三好、橋本、金森です。

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